和紙照明のこと
光ファイバーを使った特殊な舞台照明の会社にデザイナーとして在籍していたころ、山本寛齋さんの京都コレクションのお手伝いをしました。畳一枚分の大きさの和紙を8枚、光らせて空中に浮かせたいとの依頼でしたので和紙の産地烏山に通い詰め、手漉きを習いながら光ファイバーを漉きこみました。
京都国際会議場のステージで観た和紙を透過する光の美しさに惹かれ、数年後には烏山に戻り「和紙照明の世界」に入っていました。
手漉き和紙の美しさにこだわり、まず作り上げたのが立体に漉きあげた「LUNA」です。
一枚ものの和紙の球体照明「LUNA」はその年栃木県伝統工芸展で最優秀賞をいただきました。翌年和紙の原材料である楮(こうぞ)を造形素材として用いた「KASUMI」を開発、「LUNA」と組み合わせた作品「抱月」を「美濃和紙あかりアート展」に出品しアート大賞をいただきました。
賞をいただいたことは大きな励みになり、恵まれた滑り出しでした。
和灯屋のこと
7年間烏山和紙会館お世話になったのち2009年自宅に作業場をかまえ、製作拠点を宇都宮に移しました。
ギャラリーを兼ねていますが、手狭ですので大きな作品は作れず置けず友人のアトリエなどを間借りしています。
闇を明るくするのが照明の本来の目的ですが、「あかり」には空間を視覚的に変化させる大きな力があります。和灯屋のつくる照明は「演出照明」だと思っています。
演出照明は舞台やステージだけのものではありません。一般的に部屋(空間)は多目的に使用されます。仕事場がくつろぎの場所になり、時には寝室になることもあります。そんな時照明を変化させることにより場面転換ができて目的に沿った部屋になります。ペンダントやスタンドライトなどのお仕事を頂く折、出来うる限り現場(お部屋)を見せて頂くことにしています。その空間の環境の中で適切な「あかり」は何かをご相談しながら製作してきました。時間も手間もかかり効率の悪い作業になりますが、それが和灯屋の仕事であると考えています。
わたしは元来物つくりが好きなのですが飽きやすく同じものを作り続けることが苦手で、どうしても職人にはなれないようです。そのかわり好奇心は強く新しい人や素材との出会いが製作意欲を高めてくれます。新たな提案をお待ちしています。